
岐阜県垂井町、南宮山の麓に、燃えるような朱色の社殿が並んでいます。それが南宮大社です。地元では古くから「なんぐうさん」と呼ばれ、親しまれてきました。
美濃国一宮であり、平安時代の延喜式神名帳では「仲山金山彦神社」の名で名神大社に列せられた、由緒ある古社です。旧社格は国幣大社で、現在は神社本庁の別表神社にあたります。
この神社を語るうえで欠かせないキーワードが「金属」です。祀られているのは、鉱山や金属を司る神様。そのため南宮大社は、全国の鉱山業・金属業・鍛冶職人から「総本宮」として深く崇敬されてきました。
では、その金属の神様とは、いったいどんな神様なのでしょうか。誕生には、少し痛々しい神話が伝わっています。
主祭神は、金山彦大神(かなやまひこのおおかみ)。相殿には彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)、見野命(みののみこと)が祀られています。
金山彦大神の誕生には、少し痛々しい神話が伝わっています。伊耶那美命(いざなみのみこと)が火の神・火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)を出産した際、火傷に苦しむ中から生まれた神様なのです。生まれた姿が、溶けた鉄のように見えたことから、鉄や鉱山を司る神として信仰されるようになったと伝えられています。
痛みの中から生まれたからこそ、困難を乗り越える力を持つ神様として、ものづくりに携わる人々の心を支えてきたのかもしれません。

社伝によれば、金山彦大神は初代・神武天皇が東征した際、八咫烏(やたがらす)を助けて力を発揮し、不破郡府中の地に祀られたのが始まりとされています。その後、第10代・崇神天皇の時代に現在の場所へ遷座しました。
当初は「仲山金山彦神社」と呼ばれていましたが、美濃国府から見て南に位置することから、いつしか「南宮」と呼ばれるようになったと伝えられています。

南宮大社の歴史のなかで、最も大きな出来事が慶長5年(1600年)の関ヶ原の合戦です。天下分け目の戦の兵火によって、社殿はすべて焼け落ちてしまいました。
社殿が再び姿を取り戻したのは、それから42年後の寛永19年(1642年)。三代将軍・徳川家光が再建したのですが、公式には、この再建は春日局の願いによるものだったと伝えられています。乳母として家光を育て、大奥の礎を築いたあの春日局が、南宮大社の再興を願い出ていたというのは、あまり知られていないエピソードではないでしょうか。
現在私たちが目にする朱色の社殿は、この再建以来、およそ380年にわたって受け継がれてきたものです。本殿をはじめ18棟が国の重要文化財に指定されており、和様と唐様を組み合わせた独自の様式は「南宮造」と呼ばれています。
金属を司る神様を祀ることから、南宮大社は次のようなご利益で知られています。
「金の神様」というと金運ばかりが注目されがちですが、本来は鉄や鉱山そのものを守護する神様です。ものづくりに携わる方はもちろん、新しい挑戦を控えている方が、困難を乗り越える力を授かりに訪れる神社ともいえるでしょう。

境内に足を踏み入れると、まず目を引くのが朱塗りの社殿群です。楼門から本殿まで一直線に配置されており、楼門越しに日の出を望むこともできます。楼門の正面には左大臣・右大臣、裏側には狛犬が控え、参拝者を見守っています。
楼門の手前には、社殿と同じ寛永19年に造られた「石輪橋」があります。この橋は大きく弧を描いた反り橋で、人が渡ることはできません。神様だけが通るとされる「正中」を人が踏むことのないよう、あえて渡りにくい形にしてあるのだと伝えられています。神様のための橋、という発想そのものが興味深い見どころです。

境内には、樹下社・高山社・隼人社・南大神社・七王子社など、重要文化財に指定された境内社が点在しています。それぞれに異なる神様が祀られ、山の神、農業の神、安産の神など、その由来を辿るだけでも小さな神話めぐりになります。
なかでも印象的なのが、東照宮と御霊社です。東照宮には徳川家康公を神格化した東照大権現が祀られ、御霊社には関ヶ原の戦いで命を落とした人々の御霊が祀られています。この神社が、関ヶ原の勝者を祀る社と、その戦で散った人々を慰霊する社の両方を境内に抱えているという事実は、南宮大社と関ヶ原の合戦との深いつながりを静かに物語っています。

本殿の奥、七王子社の傍らには、御神木の白玉椿が植えられています。白く気品ある花を咲かせるこの椿は、古くは宮中の儀式にも用いられ、和歌にも詠まれてきた由緒ある木です。
春に訪れると、朱色の社殿と白い椿の対比を楽しむことができます。
南宮大社を奥を上っていくと、奥宮にいける入口があります。

頂上には、子安神社・高山神社があります。
なかなかの神秘的な雰囲気のある場所
御朱印やお守りについては、種類や初穂料が時期によって変わる可能性があるため、参拝前に社務所または公式サイトのFAQページでご確認いただくのが確実です。(この項目、詳細を追記する場合は改めてご相談させてください)
南宮大社では、一年を通じてさまざまな祭事が行われています。
なかでも11月の金山大祭は、金属業に携わる職人たちが全国から集まり、鍛錬の実演などが行われる、南宮大社らしい祭事です。5月の例大祭では、還幸舞や神輿渡御など、一年で最も華やかな神事を見ることができます。

東海道本線・垂井駅から徒歩約20分です。大垣駅からは名阪近鉄バス「大垣宮代線」で「南宮大社前」下車すぐですが、このバスは正月三が日のみの運行なので注意してください。
名神高速道路からは養老スマートICの利用が便利です。駐車場は境内手前の敷地内にあり、年末年始のみ交通規制がかかります。初詣シーズンに訪れる際は、事前に公式サイトの交通規制情報を確認しておくと安心です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 南宮大社 |
| 住所 | 岐阜県不破郡垂井町宮代1734-1 |
| 電話番号 | 0584-22-1225 |
| 参拝・授与時間 | 夏期(4月16日〜10月14日)5:00〜18:00/冬期(10月15日〜4月15日)6:00〜17:30 |
| 駐車場 | 境内手前・南宮大社敷地内(年末年始は交通規制あり) |
| アクセス | JR東海道本線「垂井駅」から徒歩約20分/名神高速道路「養老SA(スマートIC)」より車 |
焼け落ちた社殿が、乳母の願いによって将軍の手で甦る。南宮大社の歴史には、そんな人と人との思いのつながりが刻まれています。朱色の社殿を見上げながら、金属の神様が見守ってきた380年の歳月に、思いを馳せてみてください。