
岐阜県中津川市、日本百名山にも数えられる恵那山(標高2,191m)の麓に鎮座する恵那神社。実はこの神社、「恵那」という地名そのものの生みの親だということをご存知でしょうか。恵那市、恵那峡、中央自動車道の恵那山トンネルなど、周辺の地名すべてがこの神社の神話に由来しています。この記事では、恵那神社の歴史・ご利益から見どころ、アクセスまで、参拝前に知っておきたい情報をまとめて紹介します。

恵那神社は、平安時代の延長5年(927年)に編纂された「延喜式神名帳」にその名が記載されている、由緒ある式内社です。延喜式内社とは、当時の朝廷が公認した格式の高い神社のことで、全国でも限られた神社のみがこの名簿に載っています。
古くは信濃国(現在の長野県)木曽郡全域も氏子(うじこ=その神社を信仰する地域住民)とする、木曽・東濃地方一帯の総社として崇敬を集めてきました。

恵那神社の神話は、伊弉諾命(いざなぎのみこと)と伊弉冉命(いざなみのみこと)の夫婦神が、天照大神をお生みになった場面から始まります。
出産の際に出た胞衣(えな=胎児を包んでいた膜と胎盤のこと)を、この恵那山の地に納めたと伝えられています。そこから「恵那」という地名が生まれ、現在の恵那市や恵那峡、恵那山トンネルなど、周辺一帯の地名の起源になったとされています。
神社から少し離れた場所には、胞衣を洗い清めたという「血洗池(ちあらいいけ)」の跡や、出産後にイザナミが腰を掛けて休んだという「腰掛岩」、産湯を使ったと伝わる「湯舟沢」など、神話ゆかりの地名が今も残っています。周辺散策とあわせて訪れると、神話の世界がより身近に感じられるでしょう。

日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の際にこの一帯で道に迷ったとき、恵那の神が白い犬に姿を変えて道案内をしたという伝説も残っています。困難な旅路を導く神様として、古くから旅の安全を願う人々に親しまれてきました。
平安時代末期、木曽義仲が挙兵した際、恵那神社で戦勝祈願を行ったと伝えられています。その際に奉納されたと伝わる太刀「銘 貞綱(めい さだつな)」は、現在も社宝として大切に保管されており、岐阜県の重要文化財に指定されています。祈願詞(きがんし=祈りの言葉を記した文書)も保存されており、当時の信仰の厚さがうかがえます。

主祭神は、国産み・神産みの祖神である伊弉諾命(いざなぎのみこと)と伊弉冉命(いざなみのみこと)の夫婦神です。天照大神をお生みになった親神として知られ、この二柱は境内の御神木「夫婦杉」に宿るとも伝えられています。
天照大神を出産した神話にちなみ、安産・子授けのご利益で特に知られています。また、夫婦神を祀ることから縁結びのご利益もあるとされ、家族や夫婦の絆を願う参拝者にも親しまれています。

拝殿前に並び立つ2本の巨杉が「夫婦杉」です。右側は目通り周囲5.48m・樹高46m、左側は目通り周囲6.92m・樹高47mという堂々たる大きさで、樹齢は不明ながら推定千年ともいわれています。岐阜県指定天然記念物にも登録されており、主祭神である伊弉諾命・伊弉冉命が宿るご神木として、縁結びや子宝を願う参拝者から特に人気です。

拝殿正面の高い位置に掲げられている神額(社名を記した看板)は、「日本資本主義の父」として知られる渋沢栄一の直筆によるものです。渋沢栄一が中央製紙(現・王子エフテックス中津工場)の設立に関わった際、当地を訪れて事業の発展を祈願し、その後に奉納したと推測されています。歴史好きの方にはぜひ注目してほしい見どころです。

恵那神社のご神体は恵那山そのものとされ、現在参拝できる社殿は「前宮」にあたります。奥宮は恵那山の山頂に鎮座しており、登山者の中には登頂後に奥宮まで参拝する人も少なくありません。恵那山登山の安全祈願に前宮を訪れる方も多く、山と信仰が深く結びついた神社であることを感じられます。
江戸時代から地域に伝承されてきた人形浄瑠璃「恵那文楽」も、恵那神社にゆかりの深い伝統芸能です。岐阜県の重要無形民俗文化財に指定されており、例祭などの機会に奉納されることがあります。
恵那神社には普段、神職が常駐していません。御朱印やお守り、御祈祷を希望する場合は、事前に社務所へ電話で連絡してから訪れる必要があります。季節によって限定の御朱印が授与されることもあるようです。初穂料や最新の授与内容については、事前に社務所へお問い合わせのうえご確認ください。
例祭は毎年9月29日に執り行われます。また、江戸時代から伝わる「恵那文楽」が奉納される機会もあり、地域の伝統芸能に触れられる貴重な行事となっています。夏には「夏詣(なつもうで)」として、期間限定の御朱印が授与されることもあります。詳しい日程は年によって変わるため、事前に社務所へ確認することをおすすめします。
電車の場合は、JR中央線「中津川駅」から車・タクシーで約20分です。バスを利用する場合は、中津川駅前から北恵那バス「ウェストン公園」行きに乗車し、終点のウェストン公園前で下車後、徒歩約12分です。
中央自動車道「中津川IC」から国道19号線を市街地方面へ進み、中村交差点(左手にマクドナルド、右手にケーズデンキが目印)を右折して国道363号線へ。川沿いを上流方面に進むと、案内板に従って神社へ到着します。中津川ICから約15分です。

鳥居前に参拝者専用の無料駐車場があります。神社までの道は曲がりくねった細い道ですが舗装されており、駐車場からは恵那山の美しい眺めも楽しめます。
神社から徒歩圏内には、「恵那山ウェストン公園」があり、園内の滝でマイナスイオンを浴びてから参拝するのもおすすめです。少し足を延ばせば、木曽川の景勝地「恵那峡」や、天照大神の産湯伝説が残る「湯舟沢」の温泉地もあり、神話の舞台をめぐる散策が楽しめます。中津川市街には栗きんとんなど、地元の栗菓子を扱う老舗和菓子店も多く、参拝後のグルメも充実しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 恵那神社 |
| 住所 | 岐阜県中津川市中津川字正ヶ根3786番地の1(前宮本社) |
| 電話番号 | 0573-65-3557(社務所) |
| 参拝・授与時間 | 参拝は終日可能。御朱印・御祈祷等は事前連絡が必要(詳細は要問い合わせ) |
| 駐車場 | あり(無料) |
| アクセス | JR中津川駅より車・タクシーで約20分/中央自動車道中津川ICより約15分 |

恵那神社は、天照大神の出産神話に由来し、「恵那」という地名そのものを生み出した由緒ある式内社です。樹齢千年の夫婦杉や渋沢栄一直筆の神額、山頂に奥宮を持つ珍しい形式など、見どころも豊富です。
安産・子授け・縁結びを願う方はもちろん、日本神話の舞台を訪ねてみたい方にもおすすめの神社です。参拝の際は、周辺に残る血洗池や湯舟沢などの伝説地もあわせて巡ってみてはいかがでしょうか。